【ネタバレ感想】映画「葛城事件」コピーに全てが詰まった名作

葛城事件の感想

「俺が一体、何をした。」

 

 自分のことしか眼中にない夫の清

夫のなすがままに人生を過ごしてきた伸子

リストラされたことを誰にも言えず孤立する保

引きこもりから死刑囚に成り果てた稔

 

ありふれた4人家族が引き起こした凄惨な事件。そこにあったものとは。 

 

 

葛城事件の基本情報

監督:赤堀雅秋

配給:ファントム・フィルム

上映時間:120分

 

監督作品としては「その夜の侍」に続き二作目の今作。二作目でこの名作を生み出すとは恐るべしですね。

 

葛城事件のあらすじ

どこにでもありそうな郊外の住宅地。ボソボソと『バラが咲いた』を歌いながら、葛城清(三浦友和)は、古びた自宅の外壁に大量に落書きされた“人殺し”、“死刑”などの誹謗中傷をペンキで消している。やがて庭に移動すると、庭木にホースで水を撒きながら、ふとこの家を建てた時に植えたみかんの木になる青い実に手を伸ばす……。親が始めた金物屋を引き継いだ清は、美しい妻・伸子(南果歩)との間に2人の息子も生まれ、念願のマイホームを建てる。思い描いていた理想の家庭を築き上げたはずだった。しかし、その想いの強さが、家族を抑圧的に支配するようになっていたことに、清は気付いていなかった。長男・保(新井浩文)は、子供の頃から従順でよくできた子供だったが、対人関係に悩み、会社からのリストラを誰にも言い出せずにいた。堪え性がなく、アルバイトも長続きしない次男・稔(若葉竜也)は、ことあるごとに清から責められ、理不尽な想いを募らせる。そんなある日、清に言動を抑圧され、思考停止のまま過ごしていた伸子が不満を爆発させ、稔と共に家出。これをきっかけに、葛城家は一気に崩壊へと向かってゆく。稔が無差別殺人事件を起こして8人の人間を殺傷、死刑宣告を受けてしまう。次第に精神のバランスを崩し、廃人のようになってゆく伸子。さらに、死刑制度反対を訴える女性・星野順子(田中麗奈)が、稔と獄中結婚するが……。

Moviewalkerより引用 

葛城事件の登場人物/キャスト

葛城清(三浦友和):葛城家の父。諸悪の根源(だと思う)。三浦友和がドハマリすぎて怖い。

葛城伸子(南果歩):葛城家の母。この人もこの人で問題あり。南果歩がドハマリすぎる

葛城保(新井浩文):葛城家の長男。広告代理店で働いていたが、成績が悪すぎてクビに。極度のあがり症を持っている。よく入社できたな。

葛城稔(若葉竜也):葛城家の次男。引きこもり。鬱屈としたものが爆発してしまい、無差別殺人を起こす。正直すごく共感した。

星野順子(田中麗奈):死刑制度に猛烈に反対しており、稔を救うために獄中結婚をする。この人もどこかおかしい。かわいい。

 

主要登場人物が全員、どこかおかしいです。そのおかしさは誰しもが抱えている短所や欠点と呼ばれるもので、仕方のないものと言えばそれで終わります。その中で、父の清がぶっ壊れていた(本格的な狂気を宿していた)がゆえに、その狂気の矛先が外部に向かってしまったのだと思います。

 

葛城事件の感想

「俺が一体、何をした。」秀逸なコピーに全てが詰まった名作

ポスターに描かれている「俺が一体、何をした。」というコピー。父親である清が崩壊してしまった家族に対して責任を問う言葉です。

 

この言葉の通り、清は家族の崩壊について、自分に非があるということは微塵も考えません。徹底的に無自覚を貫きます。貫くというか、本当に無自覚なのです。「自分はこんなに家族に対して愛情を注いできたのに、どうしてこうなったんだ?」くらいに考えているでしょう。サイコパスってこういう人のことをいうのかな……というのをひしひしと感じました。

 

中華料理屋のシーンは誰もが言及している通りに最高に最低で嫌悪感を通り過ぎて絶望を感じました。特に妊婦の嫁さんを傍らにタバコを吸うところがやばい(全員の表情が凍りついててよかった)。

 

個人的に更に絶望を感じたシーンが順子に稔の死刑を覆してほしいと依頼する場面。「人間的な感情を取り戻したのかな?」と思ったら矢先「そのほうがあいつにとって苦しいでしょう」と。

 

大事件を起こしてしまったことは間違いありませんが、実の息子に対して「苦しい罰を与えたい」というだけの思いで依頼するという。。。自分以外のことは考えられないという思慮の狭さをひしひしと感じました。

 

 

稔の告白に胸がつまった

弟が順子との面談で「自分はこんな人間です」と告白するシーンがあります。あれが本意だったのかはわからないけど、似たような鬱屈とした思いを感じることもある自分としては本意だと思っています。

一言一句思い出すことはできませんが「ナルシストで不遇な人生は誰かのせいだと思いこんでで言い訳ばかりが上手になったクソみたいな人間です私は」みたいなことを言ってました。

 

この告白には胸が詰まった。まさに自分のことを言っているように感じたからです。自分は一応職もありますが、うだつの上がらないフリーターに過ぎません。

 

稔と比べてばまだマシな日常を生きてはいますが、潜在的に「こんな境遇は脱出していつか逆転できる」そんな風に考えながら生きていたのでしょう。だからグサッと来ました。 彼のように考えて生きている人は思っている以上に多いと思うのですが、だからこそ「社会に適応できなかったはみ出者」を殺人犯にまで変貌させてしまった父清の存在が恐ろしかったです。

 

きっとあの言葉は自身だけでなく、父清にも向けられていた言葉だと思います。

 

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